2018年3月11日日曜日

鬍鬚張魯肉飯(ひげちょうるうろうはん)に会いに台北に行く


※鬍鬚張 美食文化館(寧夏路62號)。「あれっ黄色い看板じゃないんだ」という印象の美食文化館(1号店)。

 一時期、新宿や渋谷に黄色い看板にヒゲ面マークのドンブリ屋さんがあったし、六本木ヒルズの中にもテイクアウト専門のお弁当やさんがあったので、「知っている」という人も少なくないはず。漢字で書くのがとても大変なのだが「鬍鬚張魯肉飯」(ひげちょうるうろうはん)である。

 あのお店、実は台湾の「魯肉飯」(るうろうはん)のお店の看板を背負っていたのだ。

 魯肉飯は、夜市や街角の屋台でもごくふつうに食べられる台湾のソウルフード。その魯肉飯を、いま同社のサイトで調べてみると32店もチェーン展開している。私も、鬍鬚張魯肉飯はめちゃ好きだし、私のまわりにも大好きだという人はとても多い。ところが、この鬍鬚張魯肉飯の日本の店舗というのが、2009年秋に渋谷店が閉店、いまや石川県の金沢工大前店のみとなってしまったのだ。

 その後、半年ほどの間に「魯肉飯が食べたくていてもたってもいられなくなる」という禁断症状が10回はあったと思う。台湾の知り合いに頼んでちょうど台湾出張した元同僚など3~4人の手を介して魯肉飯の材料を運んでもらったり、国内で売られている缶詰やレトルトを注文してみたり……しかし、すこしばかり違うのだ。しかも、東京近郊で魯肉飯を出すというところにも3店ほど出かけたが、これがどうも納得がいかない。材料のせいか? とくに、豚肉の角煮とかをドンとのせて魯肉飯というのはやめてほしい。ご飯とトロトロの豚肉が融合するところがすなわち魯肉飯の本質だと思うのである。

 ということで、今回、台湾にでかけたら「絶対に鬍鬚張に行かねば」と思っていた私である。鬍鬚張の魯肉飯と対面するために台北まで出かけてきたといってもあながち違っているわけでもない。

 ところが、台湾に住んでいる知り合いや仕事のお付き合いのある人に聞くと、

「鬍鬚張? あれはファーストフードだよ」

とか、

「あれが魯肉飯の代表だと思われては困るね」

といった意見が返ってくる。

 そこで、今回、そんなにいうならというので「サイコーに旨い魯肉飯」というのはどんなものか追求してみたいと思った(なんて大げさに書いたけど好きな魯肉をいろいろ食べ比べるだけなんですけどね)。

 そこでやってきました。

 魯肉飯を食べる旅の最後に、夜市でも有名な寧夏路にある鬍鬚張魯肉飯の1号店、その名も「鬍鬚張 美食文化館」を攻める。

 そして、「魯肉飯」「四神湯」を注文する。
 これが、鬍鬚張の魯肉飯(小)30元。ほとんど肉が原型をとどめていないところが最大の特徴ではないでしょうか? 他店では細かく刻んだ肉で作っているところがありますが、鬍鬚張は、ここまで煮込んである。脂は今回食べた中では最も甘く漬物がそえられています。
 魯肉飯には、やはりトウガラシが必須ですよね。日本の店舗と比べてフレッシュで鮮やかな色のが出てきました。
 四神湯は、いわゆる薬膳スープ。薬膳といっても香りが独特なだけ、私の好きなハスの実も入っていて、スープを口に含んだとたん舌や歯の裏側にやさしく当たる具合がよい。
店内には創業者たちが夜市で一生けんめい働いている写真が貼られています(日本の店舗にもありました)。なんでも、あまりに仕事に専念して髭だらけになって、「ひげちょう」の店名になったのだとか。このご飯盛るのがつらそうなのがいいんですよね。
 お店の入り口にはこんな巨大な魯肉飯の模型が……。説明書きを読むと2007年に「台北魯肉飯節」なる催しがあったのだそうな(さすがやっぱ台湾に来たら魯肉飯ですよね!!)。そこで、鬍鬚張が出したのが150人分のボリュームのある「巨無覇魯肉飯」。これは、その模型だというのですねーぇ。さすがに喰えん(当たり前か)。
 そしてお店で見つけたのが、『鬍鬚張大學』という立派な本。ちゃんとしたビジネス系のジャーナリストの書いた鬍鬚張研究本である。315元。なんでも、いまや鬍鬚張はアメリカに進出して、超オシャレなお店を開いているのだそうな!! さらにこの本の帯をよく読むと、同魯肉飯50周年を記念して「鬍鬚張魯肉飯」を題材にしたエッセイのコンテストが行われている。賞品は6万元! 締め切りは9月。オレも鬍鬚張を語るゾ!!!

 ところで、サイコーに旨い魯肉飯についてだが……。

 鬍鬚張は、たしかにファーストフードである。お店に入れば、ダレた感じの我々3人でも、店員がすぐにやってきて座る前に椅子を1つ1つ引いてくれる。マニュアルができているのだ。インテリアや店内デザインにも凝っていて清潔でもある。甘ったるく、頬ばるもので、匂いをつければ、なんでもファーストフードになるという意見もある。

 ここまでに食べ歩いた4店が、旨い魯肉飯なのは間違いない(私の信用できる知人や台湾でいちばん偉い総統やグルメレストランの主人がそっと教えるお店などだからだ)。私のここまでの評価では、料理としては「丸林魯肉飯」>「梁家嘉義鶏肉飯」>「金峰魯肉飯」>「阿財虱目魚肚」となるのだと思う。しかし、魯肉飯としてはまったく違うオーダーとなるのではないかと思った。「阿財虱目魚肚」やタクシー運転手が旨そうに食べていた「梁家嘉義鶏肉飯」を、魯肉飯というんではないか?

 そういうことを思いながら、私は、食べ終わって心底思ったのだ。「やっぱり、鬍鬚張魯肉飯に来てよかった」

 これが正直な気持ちだ(これで鬍鬚張エッセイコンテストは私のいただきですね)。

Posted at 2010/08/14 16:54:53 by hortense

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